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障害者のためにイノベーションを推進するパラリンピアン、Rory Cooper氏

2021年8月

Kathryn Carrara 氏、フリーランス・ライター

Rory Cooper博士は、米国退役軍人省が所管し、ピッツバーグ大学に設置されている人間工学研究所 (HERL) の創設者兼所長です。パラリンピアン、発明者、陸軍退役軍人、技術者、マラソン選手でもあるCooper博士の発明は、車椅子の人間工学的ハンドリム (上肢の疼痛や車椅子利用者の怪我を軽減する特許技術) から、昇降や移動を支援するロボット、ホームオートメーション、補装具まで、次々ととどまるところを知りません。その画期的な研究と、発明を商品化するうえでの知的財産 (知財) の重要性について、Cooper博士に話を聞きました。

パラリンピアン、陸軍退役軍人、技術者、マラソン選手でもある、発明者のRory Cooper博士は、車椅子の人間工学的ハンドリムから、昇降や移動を支援するロボット、ホームオートメーション、補装具まで、多彩な支援技術を次々と発明しています。(写真: Rory Cooper氏提供)

人間工学とは、正確にはどのようなものでしょうか?

人間工学とは、医療や社会参加の領域に技術や工学を取り入れ、障害者が人間であることを皆に気付いてもらうための手段です。HERLでは、工学と技術を通じて、障害者の生活の質と社会参加の向上を目指しています。

1994年の創設時、障害者はしばしば、社会から不平等な扱いを受けていました。しかし、私たちは前進しました。先進的な技術や研究を駆使して障害者の移動能力や機能を改善した結果、障害者の全面的な社会貢献や社会参加が可能になりました。

私たちの研究の中心となるのは、参加型の行動設計工学 (PADE) です。我々の研究、発明およびイノベーションのあらゆる側面に障害者が関わっています。

Rory Cooper氏は、2021年の全米退役軍人車椅子競技大会において、同僚と共同で発明・製作したスポーツ用車椅子を使い「金メダル」を獲得しました。(写真: Rory Cooper氏提供)

注目すべきは主にどの分野でしょうか?

床ずれの緩和や、障害者の在宅生活と労働を可能にする技術の開発の分野には、取り組むべきことがなお多く残されています。在宅支援制度やメインストリーム技術は障害者の支援になっています。私のワゴン車がその例です。昔は改造の必要がありましたが、今は私に必要な支援機能の大半が備わっています。最近ではほとんどの人が、ボタン1つで開閉する便利なドアを好みますから。支援技術を普通学級や一般の職場に持ち込むことは、より包摂的な環境を作るための無限の機会であり、障害者が新しい支援技術を生み出し影響を及ぼすうえで重要な役割を果たします。

HERLの発明は、産業化されているのでしょうか?

はい。私たちの発明の多くが、特許を取得して産業化されています。私たちは揺るぎない実績を持っています。HERLは、大勢の障害者を擁する多様性に富んだ組織です。全国、そして世界中のコミュニティに広い人脈を持っています。私たちは、障害者と緊密に連携して彼らが直面している実際の問題を突き止め、ソリューションをもたらすために協力します。優先順位は、利用者のニーズや私たちの能力、考えられる影響を踏まえて判断しています。

例えば、1990年代には、世界のほぼ全ての手動車椅子に影響を及ぼしていたクロスブレースの破損の問題を解決しました。この技術をロイヤリティフリーで共有したことで、数百万人が恩恵を受けることができました。

その後、ナチュラル・フィットとサージという商品を発表しました。それらは世界で最も販売された人間工学的ハンドリムであり、世界で最初に商品化されたハンドリムの1つでもあります。約300,000個が販売され、手動車椅子の利用者の疼痛や怪我を劇的に低減させました。

1990年代には、世界のほぼ全ての手動車椅子に影響を及ぼしていたクロスブレースの破損の問題を解決しました。この技術をロイヤリティフリーで共有したことで、数百万人が恩恵を受けることができました。

バーチャル・シーティング・コーチの機械学習ハードウェアとソフトウェアについては、別の道を選択しました。世界的な企業であるPermobil社にライセンスを供与したのです。同社はそのライセンスを電動車椅子のラインナップに適用し、自社製品と競合他社製品との差別化を図るとともに、障害者が床ずれやリンパ浮腫 (脚の腫脹) の進行リスクを管理できるようにしました。

多様性はなぜ重要なのでしょうか?

私は、多様性を強く支持しています。不均一性 (heterogeneity) はイノベーションの鍵です。HERLの人材の大半は、障害、民族、ジェンダー、文化のいずれかを問わず、科学の分野では少数集団です。

多様性が重要なのは、多角的な視点をもたらすからです。様々な背景を持つ人たちと一緒に仕事をすると様々な選択肢が生まれ、一緒に仕事をしていなければ解決できなかった問題を解決できる場合があります。

多様性・不均一性はイノベーションの鍵です。

機械学習機能は車椅子上でどのような役割を果たすのですか?

機械学習機能を搭載した車椅子は、その機能を最大限に利用する方法を利用者に提示するほか、臨床医にしか行えない指導を補完的に行います。このシステムは、ニコニコマークのように仮想の報酬を与えることで、利用者が疼痛や床ずれの管理指導に従うよう支援します。

また、データを作成して、Permobil社のような企業が利用者の行動をモニターしたり予測したりできるようにし、健康問題を回避する方法を提示します。車椅子の利用者に電池の交換時期を通知することもできます。システムが機能しなくなった場合の利用者への経済上および健康上の影響を考えると、この機能は不可欠と言えます。

アクセシビリティ・エンジニアリング (実施容易性技術) で最も活発な領域はどこでしょうか?

HERLが開発したバーチャル・シーティングの機械学習ハードウェア
およびソフトウェアは、疼痛や床ずれに関する臨床医の管理指導を利
用者に伝え、それに従うよう支援します。(写真: Rory Cooper氏提供)

最も活発な領域は、機械学習、ロボット工学、そして障害者のニーズをメインストリーム技術に取り入れている領域の3つです。スマートフォンを例にあげましょう。私たちが同じ日に、同じスマートフォンを買ったとします。しかし、それぞれが別々のアプリをダウンロードするため、数日後にあなたのスマートフォンと私のスマートフォンは全くの別物となっているでしょう。

当初、スマートフォンは障害者のニーズに対応していませんでした。しかし今では、ほぼ全ての障害者がその恩恵を受けています。例えば、近頃の10代の聴覚障害者は、10年前の同世代の聴覚障害者と比べて不便さをあまり感じていません。最近の10代は、皆がテキスト・メッセージでやり取りをするからです。アクセシビリティ・エンジニアリングとは、製品やサービスを障害者のニーズに合わせて調整することだけでなく、スマートフォンのように、合理的な期間内に大規模な調整が可能なプラットフォーム技術を開発することでもあります。

あらゆる新興技術を常に把握しておくこと、そして企業と協力することがとても重要です。特に、自己の仕事の遂行方法をより多角的に考えることのできる障害者を企業に雇用してもらうことが大切です。例えば、私たちが仕事で使用しているAmazonのロボティック・ワークステーションは、車椅子利用者だけでなく全ての従業員に大きなチャンスをもたらす可能性があります。障害者の多くは、ほとんど職歴を持っていないか、全く持っていません。ですから初心者レベルの仕事であっても、キャリアを築くための重要な第一歩となります。他の企業が後に続かない理由はありません。

私たちの目的は、知財を使ってお金を稼ぐことではなく、私たちが知財の生みの親であるという事実を保全し、知財の使用を許諾して市場に届けられるようにすることです。

博士は既に、車椅子の技術で25を超える特許をお持ちであり、その数はさらに増える予定です。博士の研究において、知的財産が果たす役割はどのようなものですか?

知的財産は、発明を商品化するためになくてはならないものです。企業が製品から収益をあげられなければ、その製品が市場に投入されることはないでしょう。HERLのような非営利団体であっても、その発明が最終的に人々の役に立つよう確実を期すために、保護を必要とします。私たちの目的は、知財を使ってお金を稼ぐことではなく、私たちが知財の生みの親であるという事実を保全し、知財の使用を許諾して市場に届けられるようにすることです。企業が製品を市場に送り出し、その市場を通じて人々が製品を入手し、便益を享受できるようになることが大切です。

Rory Cooper氏 (中央) とその弟子のJongbae Kim博士 (左、電動車椅子) 、Sivashankar Sivakanthan氏 (中央、Cooper博士の左) 、およびDženan Džafić博士 (Cooper博士の右、電動車椅子) およびKim博士の教え子たち。(写真: Rory Cooper氏提供)

知財は研究者やイノベーターをどのように支援しているのでしょうか?

知財には、主に、研究者やイノベーターが新規発明の創作者として認知され、その発明を知的財産権で保護できるようになるというメリットがあります。知財の保護に確実を期すことは、資金調達のために重要です。知財が保護されることにより、新規性と潜在的な影響力が証明されるからです。慈善財団や政府機関をはじめ、投資家は皆、自身の投資がその対象集団にどのような影響を与えるのかを知りたがります。

特許や商標の使われ方を報告できれば、投資家は、どれだけの製品が開発され、それらがどのような問題を解決し、利用者の福祉にどのような影響をもたらしたのかを知ることができます。人間工学的ハンドリムがその例です。この器具は、大勢の利用者の健康と快適さを改善し、医療制度に多額の支出削減をもたらしました。このことは、知財の保護なくしては成し得なかったでしょう。

知的財産制度をどのように発展させていったら良いとお考えですか?

現行制度の仕組みでは、発明を保護したい全ての国ごとに知的財産権を保護する必要があります。一般に、人はその製品の最大の市場で特許権による保護を取得しますが、他の者が、その知財が保護されていない国でその製品を製造販売できないわけではありません。簡単には解決できない問題だと思います。

特許協力条約を土台として、例えば郵便局のように、ある国で現地の所得水準に見合った費用を支払って手紙に消印を押してもらい、その後その手紙が世界中に配達されるような仕組みを国際協定により構築することが1つの解決策になるかもしれません。そのような制度の下で、自国で特許出願を行い、それが世界中で認められて知財が保護されれば、誰も使用許諾を得ることなくあなたの発明を使用した製品などを製造販売することはできなくなります。

現在はどのようなプロジェクトに取り組んでおられますか?

ビデオ: Rory Cooper氏とHERLのチームは、自力で段差を登り、縁石を乗り越えられる史上初のロボット車椅子、MeBot (最近特許を取得) を開発しました。

今はおよそ75のプロジェクトに取り組んでいます。刺激的なプロジェクトばかりですよ。最近ではモビリティ・アンリミテッド・チャレンジ (Mobility Unlimited Challenge) の支援を終えて、自律走行車や交通システムを障害者に利用しやすくする取り組みを始めました。 障害者が、こうした技術の進歩の恩恵を受け、設計や開発、展開の各プロセスの要員として含まれるよう保証するための方法を見つけようとしています。

Rory Cooper氏 (右) 、Keith Rothfus前連邦下院議員 (左) と最近米国の特許を取得したMEBot (モビリティ強化ロボット車椅子) 。Rory Cooper氏は多岐にわたる支援技術で25を超える特許を保有しています。(写真: Rory Cooper氏提供)

米国運輸省の支援を受けたこの取り組みを主導し、トヨタ・モビリティ基金、Hyundai社、Waymo社、全米退役軍人麻痺者協会 (Paralyzed Veterans of America) 、全米自動車機器ディーラー協会 (National Mobility Equipment Dealers Association) およびEasterseals社などのパートナーと協働することに胸を躍らせています。包摂的な製品やサービスの誕生につながる規格、設計および研究を指南できればと思っています。

パラリンピックソウル大会のお話しをうかがえますか?

米国特許商標庁 (USPTO) の発明者トレーディング・
カード・シリーズ (Inventor Trading Card Series)
に登場したRory Cooper氏。「世界中の子供が発明者
になりたいと思ってくれれば嬉しいです。」
とRory Cooper氏。(写真: Rory Cooper氏提供)

とても良い大会でした。1988年は、パラリンピックとオリンピックが初めて同じ開催地の同じ会場で開催された年です。つまり、私たちがオリンピック選手として認められたということです。大会もパラスポーツに対する一般の人たちの支持も素晴らしいものでした。

パラリンピックには今でも関わっておられるのですか?

パラリンピック活動は、長年にわたり、そして今でも私の人生の重要な部分を占めており、世界に大きな影響を与えてきたと思います。私は、国際パラリンピック委員会のスポーツ科学作業部会 (Sports Science Working Group) のメンバーです。私の発明は、競技用車椅子のステアリング・コンペンセーターやフェンダーをはじめ、今まで25年超にわたってパラリンピックで使用されています。HERLの新規技術の一部は、車椅子レースやハンドサイクリング、車椅子ダンス、卓球で使用されています。私は、卓球用と車椅子ダンス用に最適化された車椅子を発明し、その特許を出願中です。また、低所得国の人たちが購入できる手頃な価格の車椅子を作るための新技術に取り組んでいます。

スポーツとスポーツ技術開発は、常に私の人生の重要な一部でした。アスリートはしばしば、他に先駆けて技術を取り入れようとします。彼らは自分の身体を熟知しており、技術を通じて自身のパフォーマンスを改善できることを理解しています。そのため、開発者はアスリートと良い関係が築けます。

アスリートは、私たちが開発したデータロギング技術に加えて、ポジショニングやパフォーマンスを最適化するために使用されるSMARTWheel1の恩恵を受けています。例えば、私が座っている椅子は、現在日常的に使用されているものですが、1980年代には競走用車椅子と考えられていました。人々の生活をより良くするための身体装着技術は、高水準のパラスポーツからメインストリームへと移っています。

博士は最近、米国特許商標庁の発明者トレーディング・カード・シリーズ (Inventor Trading Card Series) に登場しました。なぜそうした取り組みが重要だと思われるのでしょうか?

世界中の子供が発明者になりたいと思ってくれれば嬉しいです。発明者になろうと思っている子供は、多くはないでしょう。このカードはとても面白いですよ。私はどこへ行くときもこのカードを必ず持って行きます。このカードの良い所は、私のような障害者向け技術の開発者を含め、様々な立場の人が登場することです。技術づくりに取り組む障害者を知ることは大変重要なことです。リハビリテーション工学や支援技術など、大いに注目が必要な分野にも目が向けられるでしょう。

これまでに達成された最大の功績は何でしょうか?

HERLの創設と、私たちが生み出した技術や科学、私たちが訓練した人たちだと思います。世界のより多くの発明者や科学者が、国を問わず全ての障害者を対等の立場で見るきっかけに、私たちがなれれば良いと思っています。 インクルージョン (包括・包含) の重要性が強調されるようになり、障害者が尊厳と敬意をもって扱われ、自己の夢を追求できるようになれば素晴らしいと思います。私はしばらくそのことに取り組んできました。そしてトレーディング・カードは私にもう1つの貢献の場を与えてくれました。このカードは、発明者、イノベーションそしてインクルージョンの重要性を教えてくれます。

脚注

1"SMARTWheel: From concept to clinical practice." Prosthetics and orthotics international 33, no. 3 (2009): 198-209.

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